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湖山医療福祉グループ

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東日本大震災 支援ボランティアレポート
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吉田信三のアメリカだより 第6回

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国際アナリストで湖山医療福祉グループ顧問でもある吉田信三氏が、学術研究のためにアメリカ東海岸のマサチュッセッツ州ケンブリッジ市に滞在しています。

同氏には、アメリカの政治、経済、社会をはじめ介護や福祉など――アメリカの息吹を現地からリポートしていただいております。

5回目は、全米各地に広がる東日本大震災の被災者への支援の輪について

 東日本大震災の被災者への支援の輪はアメリカでも確実に広がっている。全米各地で様々なイベントが行われているが、東海岸での動きをリポートする。

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走れ、走れ・・・恒例のボストン・マラソン

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見るなら高い所から――と、木によじ登る女性の観客

 薄曇りのボストン市で今月18日、日本でもお馴染みのボストン・マラソンが行われた。今回で115回を数える。男子マラソンの部では、ジョフリー・ムタイ選手(ケニア)が2時間3分2秒という驚異的なタイムで優勝した。が、注目されたのは車いすの部。男子の副島正純選手と、女子の土田和歌子選手の日本勢がアベック優勝を果した。
 副島選手はヘルメットに「強い気持ち」と書いた日の丸のステッカーを貼って激走、最後の直線で前を走る2選手を追い抜きゴールイン。土田選手は「きょうは、腕がちぎれても絶対走ると思った。まだ苦しんでいる東北の人のことを思い、こういうレースが出来てよかった」と、優勝の喜びを語った。

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快走する車いすの選手

 このボストン・マラソンが東日本大震災の被災者への支援を呼びかけるいいチャンスだ、とハーバード大学の学生たちが立ち上がった。日本人学生ら数人が「Harvard for Japan」の支援組織を結成。マラソンに出場する各国選手に連帯の意思を示すリスト・バンドを手首にはめてもらうように頼んだ。呼び掛けのチラシでは「このリスト・バンドは復興へのスタートを切ろうとしている被災地の方々と皆さんをつなぐ『たすき』にもなります」と。何人かの選手が早速これに応じた。走りながらリスト・バンドを高々とかざす選手がいた。「がんばれ日本」と観衆から声援が飛んだ。

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「Hope for Japan」と書かれた赤いリスト・バンド
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リスト・バンドをはめて走る女子選手

今回の大震災へのアメリカ人の反応をみると少し複雑だ。当初、地震と津波の大きさに国民は息を飲んだ。さらに東電・福島第1原子力発電所の事故の衝撃が重なり全米で大きな関心を呼んだ。やがて、原発事故への対応のもたつきから「日本はどうなっているの?」という声に変わった。被災者救援の義捐金の集まり具合についてもアジアやアメリカなど他地域で起こっている災害の時と同じではない。社会福祉問題を専門に扱う「クロニクル・オブ・フィランソロピー」紙によると、東日本大震災の被災者救済のためにアメリカ国内で集まった義捐金の額は地震発生(3月11日)から1週間で8700万ドル(約71億円)、2週間で 1億6100万ドル(約132億円)だった。かなりの額だが、これ以前の自然災害の際に集まった義捐金の額に比べるとそれほどでもないらしい。
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例えば昨年1月のハイチ地震の時は1週間で2億7500万ドル(約225億円)、2週間で5億2800万ドル(約433億円)の義捐金が集まった。 2005年8月、アメリカ・ルイジアナ州を襲ったハリケーン・カトリナによる水害の時は1週間で5億1400万ドル(約421億円)、2週間強で10億ドル(約820億円)に達した。カトリナ水害はアメリカ国内で起きた災害だから単純な比較はできないが、ハイチの地震の時と比べてもかなり少ない。その背景について「日本は裕福だから、義捐金がなくてもやって行けると思っている人が多いのではないか」と言った分析が見られる。

 そうした空気の中で、少しでも日本の実情を理解してもらおうと懸命の努力をしているのが日本人のボランティアたちだ。先ほど紹介したハーバード大の学生たちは、ボストン・マラソンに続いて、今回の地震や津波、原発事故からわれわれは何を学ぶことができるか――をテーマに、「これからの『正義』の話をしよう」の著者で、テレビ番組でもすっかり有名になった同大のマイケル・サンデル教授らを招いてシンポジウムを開催した。

 サンデル教授は講演で、災害を通じて、文化や価値観、国境を越えた連帯感、共同体意識が生まれると強調、被災者への同情や共感だけに留めておくのではなく、他者との対話を通じて、この経験を今後にどう生かすかを考えるべきではないかと訴えた。

 「対話」の大切さを説くサンデル教授は原子力発電のあり方についても、議論を恐れず、対話を重ねることを求め、それによって「グローバル市民」の意識を共有し、より良い方向を見出すことができるのではないかと力説、参加者たちに強い感銘を与えた。

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講演するマイケル・サンデル教授

 このシンポジウムを開催した日本人ボランティア・グループを引っ張っていたのは同大4年生の女子学生だった。彼女は福島県生まれの仙台市育ち。今回の震災について「とても人ごととは思えなかった。自分はアメリカにいて何もできないもどかしさを感じていたが、でもこうした形で少しでも私たちの思いを被災地に伝えたかった」と語る。仲間の大学生を誘って震災、被災者への理解を求める運動を進めて来た。ハーバード大学も「あらゆる援助を惜しまない」と側面から強力に支援した。こうした運動は少しずつだが、今、全米に広がっている。

(2011年4月26日)