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吉田信三のアメリカだより 第4回

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国際アナリストで湖山医療福祉グループ顧問でもある吉田信三氏が学術研究のためにアメリカ東海岸のマサチュッセッツ州ケンブリッジ市に滞在しています。

同氏には、これから折にふれて、アメリカの政治、経済、社会をはじめ介護や福祉など――アメリカの息吹を現地からリポートしていただきます。

4回目は、模擬国連について

先日、ボストン市内で開かれた「ハーバード大学主催・高校生のための模擬国連会議」を見学する機会があった。運営はハーバード大学の学生が行い、世界35か国から、200の高校、2500人の高校生が参加した。世界大会といってもよいくらいの大規模なイベントだった。第1回は1953年に開かれて今回が58回目だというから、半世紀以上の歴史を持つ由緒あるもの。大学生のための「模擬国連会議全米大会」も、別途、開かれた。

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写真①-1 会場は大きなホテル
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写真①-2 受付 参加記念にバラ一輪 しゃれてるよね!

高校生のための模擬国連会議はボストン市内のシェラトン・ホテルで、1月27日から30日まで4日間にわたって開かれた。本物をモデルにした「国連総会」や、「安全保障理事会」、「経済社会理事会」などの下部機構が設けられ、ハーバード大生の指導で、高校生たちが熱心に討論を行っていた。高校生たちは1年前から準備をする。まずどこかの国の代表を割り振られる(アメリカ人がセネガルの代表になったり、中国の代表だったり、カンボジア人がアイルランドの代表をつとめたり、ベネズエラの代表をつとめたりすることが決まる)と、それから1年かけて自分が担当する国の政治や経済、外交方針について猛勉強をする。その成果を持って国連に臨み”自国”の立場を主張する。ディベートの訓練の場だ。それだけではない。自分が知らない国のことを徹底的に勉強するから、世界に対する見方がすっかり変わり、視野が広くなる。ハーバード大が模擬国連会議を開催する狙いはそこにあるのだと言う。

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写真② 模擬国連総会で活発な討論

模擬国連会議と言っても国連のことだけをやるわけではない。
各国政府の仕事、外交官の役割、NGO やNPOの運営、報道のことなどについても研究し、シミュレーションをして学ぶ。国連総会に合わせて各国政府が熾烈なロビー外交を展開する様子を体験したり、国連総会に出席する各国代表を取り囲んで本物さながらに取材を模擬体験したりする。その様子を見たが、高校生たちの表情は真剣そのものだった。

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写真③ 本会議場の外ではあわただしく記者会見が

国連以外のことといえば、変わったところでは、バーチャルな擬似空間を再現するコーナーがあった。たとえば、今から約450年前のイギリスのエリザベス女王(1世)の時代の「枢密院」を再現するとか、現在、アメリカで、中央銀行の役割を果たしている連邦準備制度理事会(FRB=日本の日本銀行に相当)の議事運営を模擬体験するとか、あるいは未来の空間、5年後(2016年)の日本政府はどうなっているだろうかと擬似内閣を作って想像体験する、といったイベントだ。
たとえば16世紀のイギリスの「枢密院」なら、それがどんな仕組みや構成になっていて、何を議論していたかを調べる。当時のイギリスについてそれほどの知識がなかった高校生たちも百科事典や歴史書をひもとき、図書館に通って調べるうちに、だんだんと面白くなって、今では大変な歴史好きになっているのだそうだ。
連邦準備制度理事会(FRB)はアメリカの金融政策の元締め。公定歩合を上げたり下げたりしながら、景気のかじ取りをする。アメリカ経済にとっては非常に重要な機関で、オバマ大統領も頼りにしている。そんな機関のこと、経済や金融のこと、公定歩合の決定のプロセスなどについて突っ込んだ勉強をする。調べてゆくうちに、今の時代の経済の仕組みがわかってきて興味がつきないそうだ。
ハーバード流「模擬国連会議」は、高校生に、国連はもとよりあらゆることに興味と関心を持ってもらって、それによって世界を知ってもらおう、世界がわかれば紛争も減り、平和につながる、そのようなことを考えて毎年続けているそうだ。

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写真④-1 日本の閣議で、真剣な議論 これで日本を知る若者がまた増えた
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写真④-2 指導役のハーバード大生のルーカス君

日本が話題になったついでに「日本の首相官邸・2016年」なるプロジェクトを傍聴させてもらった。でも、なぜ、2016年なの??。このプロジェクトを企画したルーカス・ヤラブ君(ハーバード大2年生)に聞いた。すると、こんな答えが返ってきた。「今から5年後の日本って色々な問題に直面するでしょ。経済もそうだし、安全保障もどうなるかわからない。中国との関係はどうなっているか。北朝鮮の金正日体制だって残っているかどうかもわからない。そんなことを考えて2016年を設定して、日本の政治をシミュレートしてみました」。どういう訳か2016年の日本の首相は小泉進次郎代議士(小泉元首相の息子)。これもご愛嬌で・・・。北朝鮮が内部崩壊して、対外強硬路線を突っ走り、日本を核兵器で脅したら日本はどう対応するのか、などを想定して、日本の首相官邸の閣僚の議論をバーチャルに再現したそうだ。「日本から外交使節を送って自制を求めるべきだ」、「アメリカの援軍を頼もう」、「日本も核武装して対抗しよう」など侃々諤々の議論をして、最後は挙手で賛否を問い結論を出す。ルーカス君は「結論が大事なのではなく、議論しあうことが大事なのです」と語っていた。

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写真⑤-2 日本はどうしたらいいか 最後は閣僚が挙手で決めた
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⑤-2 配布資料

「ハーバード大学主催・高校生のための模擬国連会議」を見学して印象深かったのは、このプロジェクトをすべて大学生が運営しているということ。世界中から集まる高校生と、付き添いの先生を合わせると3000人の規模になるこの”大会”をスタッフ、200人(すべて学生です)でお世話をする。ちょっとした大きさの会社を経営しているくらいの感覚。大学生にとっては”大会”を無事終える責任がある。そうした経営・運営の経験が立派な社会勉強になっている。そして、もうひとつ。大学生が高校生を指導してゆくこのイベント。本当に素晴らしい。アメリカでは、このように大学生と高校生によるコラボレーションの社会活動が結構、盛んだ。日本でも最近は増えてきたが、こうした活動がもっともっと行われるとよい。と、そんなことを考えながら高校生の模擬国連を見学した。
《なお、大学生バージョンの「模擬国連会議全米大会」は、高校生のより少し遅れて2月17日から20日にかけてやはりボストン市内で行われた。》

以上

日本の模擬国連についてはこちら

(2011年2月21日)